さらなる作業のスピードアップするためにこちらの書籍を読んでみました。
構成
- 過去のやり方は通用しない
- スクラムが誕生するまで
- チーム
- 時間
- 無駄は罪である
- 幻想を捨て、現実的なプランニングを
- 幸福
- 優先順位
- 世界を変える
上記の章に分かれていて、それぞれ具体的な企業の失敗例や成功例の記述のあとに、
スクラムをしていく上での考え方などが書かれています。
また、章の最後に箇条書きで重要事項が書かれていて、
内容の復習にもなって大変わかりやすかったです。
一通り読んで、私が大切だと思った内容を記載しておきます。
1. 過去のやり方は通用しない
この章では従来のウォーターフォールよりもスクラムが優れている点が書かれています。
プロセスやツールよりも個人と対話、包括的なドキュメントよりも動くソフトウェア、
契約交渉よりも顧客との協調、計画に従うことよりも変化への対応に価値をおき、
この価値観を実践するためのフレームワークをスクラムと呼びます。
重要なのは、スピードアップを妨げる要素が何なのかをチームのメンバーが把握し、こういった障害を取り除くことです。
スピードを鈍らせる原因を見つけ、スプリントごとに排除していくことが重要です。
スプリントの最後で進捗を把握することで、自分たちがどの程度のスピードで作業ができるかといったベロシティを知ることができます。
また、仕事の成果に対してすぐにフィードバックを得られ、方向性が正しいかなど検討することもできます。
デモンストレーション可能なプロダクトをこまめに完成させて見せて説明することで説得力もうまれます。
開発者が密に連携する、共通の目的に向かってまとまる、
ゴールに至るまでに段階的に成果を出していくことが求められます。
早い段階で失敗し、早いうちに修正することが大切です。
2. スクラムが誕生するまで
この章ではスクラムが誕生した経緯と、スクラムの始めるにあたってのことが完結に書かれています。
パフォーマンスが優れた企業は、
プロセスは段階で分断せずに重なり合っていてスピードと柔軟性があり、
チーム自らが決定するといった主体性、境界を超えた大きな目標があります。
スクラムは実際にやってみるしかないので武道でいう「守破離」の考え方で実践します。
「守」で決まりと型を学び、身体が覚えるまで繰り返します。
「破」で新たな工夫を試み、
「離」で型から離れて自分の創造性を加えます。(真に体得できている段階)
仕事は辛かったりつまらなかったりするべきではなく喜びの表現であり、
より高い目標に向かって進むべきです。それには練習が必要です。
3. チーム
この章では優れたチームに必要な要素、作り方について書かれています。
優れたチームには下記の3つの要素があります。
- 境界や限界を越える(高い目標意識がある、素晴らしい仕事をするという決意がある)
- 主体性(自己組織的かつ自己管理的、決めたことを守り実現していく力がある)
- 機能横断性(プロジェクトの完成に必要なスキルを全て備えおり、何がベストか判断できる)
優れたチームは自分が一番良いと思う方法で仕事を進められる自由があります。
組織のトップが目標を設定したら、それをどう実現していくかは実際に仕事をするメンバーに委ねます。
チームの人数は小さく5〜9人までにする必要があります。
9人を超えるとプロジェクトのスピードが落ちることがデータで証明されています。
この理由としては、人間が短期記憶で記憶できる情報の数は4までであること、
チームの人数が増えるとコミュニケーションのルートが増えてさばききれず、
他のメンバーが何をしているか把握できなくなる、といったことがあげられます。
スピードをあげるには、他のメンバーがしていることを常に知っておく必要があります。
ここで重要になってくるのがスクラムマスターの役割です。
スクラムマスターはチームのミーティングで進行役を務め、障害になる事柄を率先して把握し、
チーム内に透明性が保たれるように気を配ります。
継続的に改善し前進させていくように努め、
プロジェクトの進め方で変えられるところはないか、仕事を進める上でどこが一番の難関かを考える必要があります。
何か問題があったときは人を非難しないでシステムを改善することを考えます。
個人のパフォーマンスよりもチームのパフォーマンスを変えたほうが生産性は格段に上がります。
4. 時間
この章では、スプリントやデイリースタンドアップについて書かれています。
人間は集中したり、どれだけ時間がかかるかを予測するのが下手な生き物です。
この改善をするためには、デイリースタンドアップが効果的です。
チームがスプリントを終了するために昨日何をしたか、今日は何をやるか、チームの妨げになっていることは何かをいう
ミーティングを毎日定時に1回、15分以内で行います。
毎日全員が集まって直接話すことで、問題があったときに助け合ったり解決に導くきっかけになります。
コミュニケーションが充実し、メンバーが共有している情報が多いほど、チームのスピードは上がります。
話し合いが必要な場合は、改めて場を設けて必ず15分以内におさまるようにします。
ここで間違えてしまわないのは、個人の進捗報告にはしないことです。
スピードアップするための提案をしたり、チームが自分で進んで良い仕事をしようとする姿勢が大切です。
終了後にはその日にやるべき最終事項を全員がわかっている状態にします。
他の人が仕事を終えるのを待つ時間、情報がくるのを待つ時間といったムダを排除し、
時間を効率的に行うことが大切です。
5. 無駄は罪である
この章では、ムダを排除して高い生産性で作業をする方法が書いてあります。
マルチタスキングは時間のロスを生み、人の知能も下げるので、
1度に1つのことをするほうが効率的に作業をすることができます。
最初からやるよりもミスを修復する方が労力がいるので、
問題に気付いたらすぐに対処するほうが効率的です。
遅い時間まで働くことは、うまくいっていないことの表れです。
労働時間を短くすると働く人は幸せになり、仕事も進み仕事の質もあがります。
長時間仕事をし続けると集中力を欠き、誤った判断やミスが多くなり、生産性が下がります。
意思決定能力はエネルギーを消耗すればするほど、休憩時間がなくなるほど落ちます。
ムダ、ムラ、ムリはしないことが大切です。
挑戦しようとする意欲を湧かせる目標はモチベーションにつながりますが、どう考えても不可能な目標はやる気を消失させます。
6. 幻想を捨て、現実的なプランニングを
この章では、プランニングでのスケジュールや見積もり方法が書かれています。
付箋に書き出したタスクについて、何を作れば完了なのかだけでなく、
どうすれば完了と判断できるかも一緒に書くことが大切です。
プロダクトにもっとも付加価値を与える要素を最初にやるような優先順位を付けることが重要になります。
計画は必要ですが、最初にすべてを計画するのではなく、プロジェクトを進めながら計画を洗練していきます。
次のタスクに必要な分だけ詳細の計画をたて、残りは大まかな見積もりだけを出しておきます。
人間は相対的に規模を把握するのは得意で、他と比較して大きさを把握することができます。
フィナボッチ数列の数は違いが明確にわかるくらい離れているので、悩まずにどちらかを選ぶことができます。
このフィナボッチ数列を使った見積もりポーカーが有効です。
懸念があっても他のみんなが同意していれば同意してしまうといった「バンドワゴン効果」や、
容姿などで優れていると推測してしまう「ハロー効果」などによって、
事実をありのままに評価できないことがありますが、見積もりポーカーで解決することができます。
数字はあくまで見積もりなので、スケジュールを決めるわけではありません。
計画をたてるときはタスクでなくストーリーで考え、スクラムではこれをエピックと呼びます。
ストーリーは「何の役割として、何を目的として、何の理由のために」で考えます。
また、実際のアクションを起こせるだけの具体的な内容である「INVEST」の要素がそろっている必要があります。
- INVEST:独立している、交渉できる、価値がある、見積もり可能、小さい、テスト可能
ベロシティがわかると、スピードアップの妨げになっているものが見えてきます。
スピードをあげるためにやり方を変えられるところはないか、
バックログの残りのタスクを減らせないか、やらなくていいタスクはないか、といったことを常に考えます。
7. 幸福
この章では、幸せに仕事をする大切さが書かれています。
やり遂げたあとより挑戦している瞬間こそが最高の幸せであり、真の喜びです。
人は成功しているから幸せなのではなく、幸せだから成功します。
幸福感が増すだけで人間のパフォーマンスはぐっと上がります。
スクラムではスプリントの最後に行う「スプリントレトロスペクティブ」というミーティングで改善点がないか検討し、
そこで「幸福度の計測」をすることによって効果的に改善を見つけることができます。
「幸福度の計測」では、会社内での自分の役割についてどう感じているか、会社全体についてどう感じているか、
なぜそう感じるのか、何を1つ変えれば次のスプリントでもっと幸せだと感じられるか、について答えます。
このことで、メンバーが何を一番大事だと考えているのか、
会社にとっては何が一番大事だと考えているのかが明らかになります。
チームのメンバーを実際に幸せにする要素とは「主体性、スキルアップ、目的意識」です。
自分の運命を自分でコントロールできること、自分が上達しているという実感、
何かについて何かに力を尽くしているという感覚がメンバーを幸せにします。
そのために透明性が必要で、誰でも情報が見える状態であることや、職場でのコミュニケーションが大切です。
職場で他の人とのつながりが充実している人ほど幸福度が高く、
イノベーションを生む力や生産性も高くなります。
研修など課題に対して真剣に取り組んで乗り越えた仲間は、そのあと長きにわたって関係が続くことが多いです。
人は成長したい気持ちを持っており、
仕事ができるようになりたいという気持ちは人を動かす原動力になります。
仕事に行くのは楽しいことであるべきです。
「会社で働く」から「自分の会社とともに働く」への転換をすることが大切です。
ある程度チームが成長したからといって自己満足してはいけません。
ここで重要になるのが、スクラムマスターの役割です。
前向きな伸びがなければ努力が必要だと促し、聞きにくいことを聞いたり、
向き合いたくない事実をあえて指摘するといったことを行います。
スクラムであるべき姿とは、目の前の楽しさだけでなくよりよい未来を見つめる目を持ち、
この先も楽しいと自信を持って思えるタイプです。
8. 優先順位
この章では、優先順位の付け方やプロダクトオーナーについて書かれています。
収益を上げられなければただの趣味です。
価値あるものを実現するためには何が必要かを考えます。
大事なのは「最初に何から始めるか」です。
最小の労力で最大の価値を生み出す部分は何かを考え、すばやく形にすることが求められます。
それが終わったら次に追加する分の価値を見定め実行し、また次へ進みます。
この優先順位を決める役割をプロダクトオーナーといいます。
プロダクトオーナーは、仕事の領域に精通していること、決定権を行使できることが必要です。
成果につなげる考え方にOODA(ウーダ)ループというものがあり、
観察、情勢判断、意思決定、行動を行うことを意味します。
成果物をスプリントごとに出すことにより、
プロダクトオーナーが変化し続ける世界にすばやく対応することが可能になります。
状況や環境の変化により、タスクの優先順位は常に変わることを意識しておく必要があります。
変更は追加費用なしとすると、顧客にとっても開発側にとってもウィンウィンの関係になります。
真の価値をできるだけ早く届けるという目標で仕事をすることができます。
市場のリスク、技術面のリスク、金銭的なリスクといった
リスクマネジメントにとってもスクラムは有効です。
感想
スクラム開発は職場で実践していたのですが厳密なルールではなかったため、
実践的な方法が具体的に書かれていて、改めてスクラム開発の良さがわかりましたし、学びが多い1冊でした。
デイリーミーティングが15分以内、個人の進捗報告にならないようにする、
情報の共有でスピードが上がる、ムダの排除といったことは意識できていなかったため、
今後は意識してさらなるスピードアップをしていきたいと思います。
また、マルチタスクが得意だと自分では思っていたのですが、
効率が悪いとのことなので、できる限り1つのことに集中して作業を片付けていきたいと思います。
成長したいという気持ちがモチベーションにつながるのは、まさにそうだと共感したので、
自分のやりたいことを会社に貢献できるかたちで上手く結びつけて、
自分と会社のために一生懸命、楽しく働いていきたいと思っています。