*概要
インフラエンジニアである著者の実体験が書いてあるので、実践的な知識が得られる内容になっています。サービスを作成するにあたって最初に必要になるインフラの構築方法や、事業が拡大したときのインフラの移行方法、監視やコスト、セキュリティなど幅広い説明があり、スタートアップからサービスを大きくしようと考えている人にとっては特に参考になるかと思います。初心者向けというよりは、インフラ経験がないエンジニア向けの内容だと感じました。私はあまりインフラが好きではないのですが、著者も最初はインフラが好きではなくて、業務でやらざるを得ない状況になってやっていくうちに魅力を感じるようになって好きになった、という話もあり、インフラの魅力や大切さを知ることができたのも大きな収穫でした。
約650ページとなっていてページ数が多いため、直近の業務に必要そうな章のみを読みました。プライベートクラウドの説明では主にAWSが出てくるのですが、他のクラウドにも共通することだったりするので、プライベートクラウドを触ったことがある人はわかるかと思います。
用語については詳しい説明がないこともあるので、わからない場合は自分で調べながら読み進めていく必要がありそうです。
*構成
- インフラの心得
- スタートアップ期に必要なこと
- イベント(1)引っ越し
- 中小企業期に求められること
- イベント(2)事業拡大
- 大規模に向けて
- イベント(3)コスト削減
- 求道者の心得
*インフラの心得
インフラエンジニアを目指すにあたっての心構えが書いてあります。インフラはシステムのユーザーに直接見えない部分ではありますが、システムの土台そのものなので、その分責任が重大です。だからこそ、極力手間がかからないようにすることで、社員から感謝される度合いも大きくなるそうです。フェーズによって必要になる知識が異なったり、サービスの特性によって技術要件も異なるので、幅広い知識を得た上で必要な選定をしていく必要があります。
*スタートアップ期に必要なこと
ネットワークからハードウェアなど基礎的なことや、社内で必要になるSNSの利用や、CIツールなどが紹介してあります。パブリッククラウドについてのメリットデメリットも記載されています。現在ではAWSやGCPなどといったパブリッククラウドを使うのが主流になっていますが、インフラについて深い知識がなくてもできてしまうので、技術力が低下するといったデメリットには共感してしまいました。
私自身、最近GCPを使う機会が業務で増えたのですが、GCPが使えるといってもツールを使いこなせているだけですので、根本的な仕組みは理解できていない状況です。誰でも使えるようになった反面、本当に理解しているインフラエンジニアがいなくなっていくのも問題かと感じました。
また、パブリッククラウドのサービスをよく理解していないと、想定していなかった動きをすることもあるので注意が必要そうです。
パブリッククラウドの使い方については、リージョンを何故選択するのか、IPアドレスが何故この区切りになっているのか、インスタンスをどういった観点で選択するのか、といった根本的な説明があるので、今まで適当にポチポチ操作してきた私にとっては理解が深まりました。
*全体を通しての所感
インフラについて考慮が必要なことが多岐にわたって書いてあり、フェーズによって必要なことを理解するには良い書籍でした。私としてはインフラエンジニアになる気持ちはなく、業務で使う最低限のアーキテクチャについて学びたかったのですが、パブリッククラウドを使ったアーキテクチャについての説明は少なかったので、最も期待していた情報は得られなかったと感じています。
ただ、スタートアップに必要なインフラの知識は書いてあるので、そういった状況にある人やこれからやっていこうとしている人にとってはオススメな1冊です。
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